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『パサージュ展』


  私達「パサージュ展」は東芝病院のご協力を得て2005年12月よりB1、1F、2Fの通路、待合室にて20数名での絵画展示を行い現在に至っております。


  この話が実現出来たのは東芝病院勤務の須永さんから、病院では定期的に音楽会を催しているという話を聞くに及び、私達画家も同じ芸術に携わる者として何かできるのではないか?という考えに至ったからです。私自身も病院、介護施設に行く度に洗練された外観、清潔さと安全性を兼ね揃えた内部に感心しつつ、良く考えられた採光はかえって整えられた機能を浮かび上がらせ、その事で取り残された一隅がやはり日常とは異にする空間の緊張にさらに明暗をつけているのではないかと感じていたところでもありました。
当初は作家のみの展示を考えていましたが長年自分の生徒の絵を見続けその表現には朴訥であったり、率直なもの、そしてあっけらかんとしたそれぞれの語り口があり今回の目的と合致しているのではないかと思い作家と生徒による展示構成となりました。開催にあたり参加者と何度かミーティングを持ち、意見を交換しました。参加者の中には、病院はなるべく避けたい怖い場所である。患者さんの立場に立った時、自分の絵を掛ける事がおこがましい。逆に病気を治してくれるポジティブな場である。などの意見もありました。しかしそれ以上に、辿々しい作品であろうとも不安や緊張が行き来する待合室、廊下を和らげる事ができるのではないかと
いう期待が高まり参加の為の4つの柱を立て開催にあたりました。                                         

  1. 事前に病院の空間を体験する(体験ツアーを組んだ)
  2. 搬入搬出、展示には責任を持って参加する。
  3. 絵画に初めて接する方の為に一言コメントをつける。
  4. 癒しの為の絵を描かない。

 初日、参加者は緊張の面持ちで集まった。地下から2階まで展示のバランスを考えては絵を持って停止しているエスカレーターを上り降りした。通路では手すりを使う患者さんの歩行の邪魔にならない様に、また待合室では椅子の高さを考慮に入れ作品の設置を工夫した。60数点の作品展示の試行錯誤、刻々と時間が流れる。
ふと、参加者が以前ストレッチャーで手術室に向かうなか、薄れいく記憶の中で最後に目にした光景が「赤の消化器」であったという話がよぎり、微力ながら私達の拙い作品は絵画の持つ言葉で空間を照射できているのだろうか?そして最も必要性のある取り残された一隅に窓を開ける事ができたのだろうか?そして風が吹く事ができるだろうかと?配列を何度も見直し、この作業が絵画に求めるものそのももの様にそれぞれが作業に没頭していた。
飾り付けも大詰めを迎えた時、やはり壁材が固く絵を飾るフックの釘が入らない箇所が何カ所かあり難儀していたが、手伝いに来てくれた大工仕事に明るい友人がトンカチのリズミカルな音で見本をみせ、皆それぞれの壁に残された作品を飾 りに向かった、あちこちから与作のリズムとモールス信号が合体したような音がこだまする、妙に可笑しく陽気に響く。まるでいにしえ人の喜びの太鼓の様だった。                                
全ての展示作業が終り、路地という意味で銘打ったパサージュを歩いてみた、ある種の達成感と共にこの特殊な場を絵画によって和らげたいという思いは自己満足以外何ものでもないという疑念も頭をもたげて来る、ひと気のなくなった病院を後にしようとした時、車椅子の患者さんと付き添いの家族の方が一枚の絵に見入っている後ろ姿があり、その佇む光景は、絵と見る側がコミュニュケートした瞬間であった。                          

 この事も含め今回の展示は私達にとって絵画の可能性を深く考える機会になり、同時に個々の発信が広がりを持てたらと願うものであります。

 最後に今回の展示に快く御承諾下さった太田院長先生はじめ、休日を返上してご協力頂いた小泉課長、原田主任、増田師長、重田前看護部長に心から感謝申し上げます。

2007年 6月  齋藤 典久  アトリエサガン講師 主体美術協会会員


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