Atelier Sagan
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クレー展

「早春の鎌倉でパウル・クレー展を観る」/野村みそら








 「旅のシンフォニー」と副題をもつこの企画の意図は、クレーの見知らぬ土地への 憧憬と、造形的秩序の融合を、発見し実験し具現しようとする魂を、その作品か ら読み解く試みに基づいている。

 会場は、銅版画と見まがう細密な、自然主義的風景の鉛筆小品から始まり、クレーが、線の人、素描の人、又、風景画家であることに思い至らせる。旅はやがて、自 然の再現性よりも、インスピレーションの根源として、色彩を得て形象の拡がりへ関る。クレー作品の抽象性、装飾性、ファンタジーに幻惑されるだけでは理解し得 ないもの、自然と造形の相互浸透の時空を巡る旅への誘いとなっている。

 私達は旅をする。私達は絵を描く。私達はやがて旅を終え、自然からアトリエへ帰り着くが、過去の旅と未来の旅を制作の中にさすらうことが出来る。クレーの小さなドローイングに手法や素材を替えて表出される営みに、自然と創造の循環、回帰する旅の継続を想う。

 進路を迷う19才のクレーは云う「僕を誘うものは、はじめ芸術そのものより、出来るだけ早く遠く国外へ、もっと偉大で、興味深く生き生きしたところへ行きたい希望であった。芸術の本能的な、まともな本質を会得するのは、ずっと後のことだ った。」

 私は自身の源初の憧憬を回復する。私達は、そのように望んで出発しなかったか?クレーは多分、目指す地のごく近くに行きついた。


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