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美術エッセイ
「マチス、何を描くか、如何に描くか」/柴村純一

 マチスの初期、20代から30代前半は、僕にとって興味深い時代である。この頃、彼はロマン派から印象派へと移り変わる同時代のムーブメントの只中で敢にこれに挑んでいる。とりわけ20代後半において、その作品はすでに彼の資質を示して余りある。

  ところで僕が感心するのはその徹底したスタンスである。即ち、彼は何よりも先ず「如何に描くか」ということに多大な努力をはらっているということ。しかもこのことは晩年に至るまでの彼の作品に共通しているということだ。

  それでは、芸術表現において最重要と思われる前提、即ち「何を描くか」ということは彼にとって二の次ということか?

  然り。なぜなら、少なくともマチス彼自身の芸術において、その「内容」とは、その「形式」に従うものであるからだ。

  ここで断っておきたいのは、マチスが「内容」を「形式」の下位に置いていると言っているのではないということ。そうではなく、彼の芸術の構造自体がそのような姿勢を反映しているという「事実」について言っているのであって他意はない。

  ついでに言っておくが、「形式」と「内容」の一致あるいは齟齬ということは、どのような芸術にもつきまとう問題であり、なにもマチスに特有のものではない。形式と内容のこよなき一致、このことはマチスならずとも誰でもが願うことだろう。

  実際の芸術作品そのものにおいて、形式と内容を切り離すことはできないが、宮川淳の言うとおり、マチスは何よりも先ず、「方法の人」であるということを、彼の初期の作品に見ることができると思うのだ。




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