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展評
「須田国太郎」展を観て/柴村純一

 ひさしぶりの須田国太郎展であった。近代美術館は10数年前から現代美術に 食指をのばしているが、日本近代美術史上の重要な作家の企画をもっとやって ほしい。須田は「日本的な油彩」を創造した数少ない作家のひとりにかぞえら れている。この「日本的な油彩」なる概念自体に対してもまだまだ検証が必要 だろう。そのためにもこういった作家をもっと大きな規模で常設展覧すること が望まれる。

  須田の黒の使い方を観て感じたことがいくつかある。 ひとつは須田の絵画のイリユージョンの本質は透層、不透層との対比効果にあ るように思われたこと。僕がなんとなく想像しているのは「油彩画における透層、不透層」と「水墨における濃淡」とが、ある理解のもとで結びつくような ことがおきているのではないだろうかということだ。

  もうひとつは同じスペイン絵画に影響を受けたマネの黒の使い方においての比 較である。マネは純色としての明るい黒を使った最初の画家であるように言わ れている。それに比して、須田はなお古典的な使い方を採用しており、物体を 浮かび上がらせるために黒を用いたり、中景以後に視線を導入するための前景 として、シルエットのような使い方をする。

 三つめに感じたことは、彼の黒は構図法の一種として活用されているように思 えたこと。黒により構図し、同時に明暗のバランスをとる。このことが文人画 との類似を思い起こさせる。僕は以前から近代日本油彩画のベースに文人画が あるように思ってきたが、このように思い至ったのははじめてだった。

  いずれにせよ、こういった日本美術史にとって重要な作家の回顧展は興味深い し、「日本的な油彩画」なる概念はいまや死語に近いものなのかも知れないが、それらを検証すること自体は意義のあることのように思える。




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